私は暑さにも弱いけれども、寒さにも弱く、この頃の寒さには誠に弱ってしまいます。こうした時季には暖かい鍋料理がいちばんです。清水には、これと言って特色のある鍋料理はありませんが、日本の真ん中に位置している関係か、西の河豚、東のあんこうもあります。意外に食べないのが、すっぽん鍋(丸鍋)でしょうか。静岡県はすっぽんの産地ですから、好きな人は結構おられるのですが、独特のくせがありますので一般的でありません。以前は水炊きもよくしたのですが、そう言えばこの頃あまりしないようです。家族構成が核家族化したために大勢でつつく鍋そのものが少なくなったのかも知れません。料理屋では、鍋と言うと、ついくせの無い寄せ鍋になるのでしょうか。

テレビをみていましたら、おでんの特集をしていました。おでんと菜めしはつきもの、けっして静岡の名物ではありませんが、子供の頃はよく駄菓子屋におでんが売っていました。この頃は、関東風であれ、関西風であれ、ちょっとした小料理屋で食べるのが普通で駄菓子屋で見る事は少なくなりました。

子供の頃、駄菓子屋で食べたおでんは、文字どうり三角に切ったコンニャクが串に刺されていて、それを店の独特の味噌たれにつけて、かつお節の粉(安いソーダ鰹での)と青海苔の粉を混ぜたのでまぶして食べるものでした。今は、こんなおでん無いのかなと思ってましたところ、何となんと静岡に残っていたとは。テレビによると“大やきいも”と言う店なんだそうですが、懐かしい子供の頃を思いながら、行ってみたいと思っています。テレビでは味噌たれはないようでしたのが残念です。

清水で寒い時よく食べるのに、“きじれ”と言うものがあります。いわしを擂り潰して、せんにした人参などを加え、つみれにしたものです。味付けはそれぞれの家庭によって違うようですが、例えば味噌を加えて味を調えたりする訳です。

こうして食べるいわしは本当に美味しいものです。いわしを軽く塩をして干した目刺しは今もありますが、どこの生まれか判らない“ししゃも”の方が食べられるようになってしまいました。目刺しを“ヒチリン”の上で炙りながら食べるご飯は格別でした。“こはだ”をやはり軽く干したのを炙りながら食べたことも、もう遠い思い出になってしまったようです。(“こはだ”とは岡山でいう“ままかり”をつくる魚のことです。)(岡山と言えば、岡山には“ウオショウ”さんと言う素晴らしいお寿司屋さんがあるそうですね。)(清水にも結構なお寿司屋さんがありますが、地元のためお話しにくいので、お許しを)

いわしを材料にした“黒はんべん”は、山葵や山葵漬けを加えて醤油をかけてたべると、清水だなあーと喜びをかんじます。すこし炙って食べれば尚更です。“黒はんべん”はフライにしたりしますが、私は焼いて生姜醤油で食べるのが一番好きです。

ところで清水は、駿河湾を控えた漁港でもありますが、正直に申しますが、なかなか地元でとれた魚を手に入れる事ができなくなりました。倉沢と言うところが清水の東にありますが、そこでとれる魚は、新鮮で素晴らしいものですが、一般の人にはとても買えないほど高価です。

静岡は、気候温暖で土地もこえていましたから、なんでも美味しいものばかりでした。このことは、塩や醤油さえあれば十分美味でしたから、調理にそれほど技術を必要としませんでした。従って、この土地には 土地特有の調理を施した名物は見当たりません。一方、例えば京都のように土地があまりこえていなく、少し掘れば砂利層のところは、苦労に苦労をかけてものを改良してきました。千枚漬けの材料のかぶらと言う字を考えてみてください。蕪、つまり草もない土地にできたものです?。こうした土地には、どうしても高度な調理技術が発達したのですが、静岡県は物が豊かでしたので、高度な調理技術を必要としなかったのです。なんにもしなくても美味しく食べられたからです。

人口が増えた為でしょうか、社会の変化のためでしょうか、豊かであった私たちの土地も、以前ほど豊かで、美味しい産物を恵んでくれなくなりました。いいものがあっても、大消費地におくられ、例えば、枝豆のように清水産の枝豆を清水の者が買うのに東京経由でしなければならないのです。調理師が高度の技術を必要とする時代がきてしまいました。

今、いいものは値段の関係で都会におくられて、なかなかいいものを手に入れにくくなっているこの地の調理師さんたちの苦労は、都会の比でありません。こうした状況の中で苦労しながらも、素晴らしい料理を作っているのです。ぜひ、清水にお出でになり、地元の料理を召し上がってください。どこの料理屋さんに行っても、精一杯もてなしてくれると思います。

お問い合わせ
shimizu@tamagawa-rou.co.jp
FAX:0543-66-9713

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